こんな素敵な企業が山梨に!?思わず自慢したくなっちゃう3つの企業

FEATUREApril.15.2021

新生活がスタートし、慣れない環境での生活に喜びや不安が混在するこの季節。「生き方や働き方」について改めて自身に問い、向き合う…そんな人が増える今だからこそ紹介したい地元企業がある。今回は、山梨という地域に根付き活動を続けてきた私たちだからこそ知り得る、自慢の地元オンリーワン企業をご紹介しよう。


一粒のダイヤモンドが変えた世界〜株式会社バロン宝飾〜

ジュエリー=ファッション

(写真提供:山村洋平)

最初に紹介するのは、甲府盆地の中心に位置する中央市にある株式会社バロン宝飾。山梨は、日本有数のジュエリー産地であることはご存知だろうか?バブル崩壊と共に国内のジュエリー業界は低迷期を迎え、もちろん産地であるここ山梨でも縮小傾向が長く続いてきた。今回取材をしたバロン宝飾2代目の山村洋平さんは、創業者である父親の背中から、そんな山梨のジュエリー業界を覗いてきたという。

▲インタビューに応じてくれた山村洋平さん

「弊社は、今年で創業31年目(2021年4月現在)を迎えます。創業当初はOEMの製品制作に取り組んでいました。私が入社した約15年前、自社でデザインから制作までを手掛ける、いわゆる自社ブランド『Avaron STANDARD JEWELRY(アヴァロン スタンダード ジュエリー』に転進を図ったのです。ちょうどその頃、ECサイトが流行し始めたばかりで、販路拡大を目指し早い段階からECサイトでの販売をスタートさせました」。

▲デザインのみならず制作も手がける山村さん

山村さんが入社した当時、「ジュエリー=高貴なもの」というイメージが強く、購入できる人は限られていたと振り返る。学生時代からアパレル業界に強い関心を持ち、夢中になった時期もある山村さんだからこそ、自身が手掛けるジュエリーは「ジュエリー=ファッション」として世に広めたかったに違いない。

「先に話したとおり、流行し始めたばかりのECサイトによる販路拡大は当然のように周囲から反対されました。“ジュエリーが画面上の写真を見ただけで売れるはずがない”、“試着が出来なければ売れない”など、中には厳しい意見もありました。ジュエリー店って敷居が高くて気軽に入れなくないですか?それってどうなのかな?ってずっと思っていたんです。そうではなくて、もっと多くの人が洋服を選ぶようにジュエリーを選べたらいいのに…って。だから私にとってECサイトでの販売はチャンスでした」。

しかし、大手ECサイト上の数あるジュエリーの中から消費者に購入してもらうことは容易ではない。“どうやったら弊社の商品を知っていただけるのか?”悩み考え、時にはセミナーへも参加し、ヒントとなる小さな光を日々探しまわったそう。そんな中、見つけたアイディアが「本物のジュエリーを数量限定にして安価で販売する」ことだった。

▲ECサイト内でシンプルな一粒ダイヤのペンダントを安価で販売することを試みた

私たちにしかできないことを

「ジュエリーのド定番である、シンプルな一粒ダイヤのペンダントを安価で提供する企画を試みました。通常より1/10くらいの価格帯だったと思います。販売本数と1日に提供する本数を決めて数量限定販売にしたのです。今思えば無謀なことだったのかもしれませんが、広告宣伝費だと思えば致し方ないかな?と…。この企画で、毎日本当に多くの人に購入していただき、弊社を知ってもらうきっかけになったと実感しています。その頃からデザインの幅もどんどん広げ、時にはトップバナーに広告を出すことにもチャレンジし、制作と並行して周知にも力を入れました」。

▲取材時は、他県百貨店にて展示会開催中だったため、事務所にある商品を少しだけ撮影させていただいた

もちろん、山村さんはこうした仕掛けだけではなく、制作へも強いこだわりを持ち、その独創的なデザインは近年国内外から高い評価を受けている。山村さんが提案する製品は、あくまでもジュエリーである。ダイヤやプラチナ、18Kやゴールドなど、ジュエリーとしての品質を下げることなく、現代を生きる人々の心に響く製品をつくり続けている。

▲シンプルでありながら、細やかな曲線美や素材感が魅力 (写真提供:山村洋平)

2016年からは、かねてより実現させたいと願っていたデザイナーズジュエリーの新ブランド「A-Y2」もスタート。アンティークなデザインとそれに対比するモダンなデザインが特徴で、オーダーやカスタムの依頼も受けているオリジナリティ溢れるブランドである。

▲「A-Y2」は、自社HP又は不定期にて開催される展示会のみで販売 (写真提供:山村洋平)

▲2018年には、フランス・パリの展示会にも参加している (写真提供:山村洋平)

▲展示会の様子 (写真提供:山村洋平)

山村さんは、「世の中は目まぐるしく移り変わり、多様な暮らしが存在しています。今は、ジュエリーはこうあるべき!という時代ではなく、その価値観にも変化を感じずにはいられません。単に流行を追うことはせず、私たちのような小さな組織だからできることを大切にしながら、これからを生きる人々に響くジュエリーをつくり続けていきたいと思います。」そう最後に語った。

株式会社バロン宝飾

住所:山梨県中央市極楽寺427
電話番号:055-274-0911
https://www.a-y2.jp/


通年楽しんでもらえる新しい特産品をつくりたい〜燻製屋響〜

フルーツ以外の特産品があっても良い!

(写真提供:燻製屋響)

続いて紹介するのは、山梨県西部の南アルプス市に2018年11月にオープンした「燻製屋響」。南アルプス市は、市内全体が南アルプスユネスコエコパークにも登録されている自然豊かな場所で、スモモやサクランボなどといった果樹栽培が盛んな地として知られている。そんな南アルプス市で生まれ育った燻製屋響のオーナー手塚健斗さんは、「フルーツ以外にも通年購入できる特産品があればいいのに」シンプルにそう感じていたそう。

▲燻製屋響のオーナー手塚健斗さん

「10年以上都内で生活をしていました。家業に入るため、実家に戻ってきたのは2018年の春。南アルプス市は、古くからフルーツの栽培が盛んで、季節になると多くの人々が訪れる人気のエリアです。しかし、それ以外の季節に関しては、訪れる人もそう多くはありません。父親が経営する会社に勤務しながら、何か私にできることはないかな?そんなことを模索する日々が続きました」。

手塚さんのお父様は、釣りが趣味で幼い頃から父親が釣った魚が食卓に並ぶことも珍しくなかったそう。時にそれは、燻製として並ぶこともあったようで、お酒が好きな手塚さんは、度々そのことを思い出すようになった。そんな2つの想いが重なった時、“酒の肴になるような特産品をこの地でつくる“という熱き想いへ繋がるきっかけが生まれたのである。

▲当初の苦労も赤裸々に話してくれた

南アルプスに美味しい・新しい・珍しいをつくる

素材は全てこの地域のものにしたかったと話す手塚さんが、当時まず向かったのは、隣町の富士川町にある忍沢養殖場。海のない山梨でも美味しい魚が食べたいという想いから昭和48年より大量生産をせず、大切に育てた魚だけを届け続けているこの辺りで知らない人はいない有名な養殖場である。

「最初はもちろん門前払いでしたよ。忍沢養殖場で育った魚は、自然に限りなく近い環境で育てられているので、適度に身が締まっていて肉質も抜群です。もちろん臭みも感じません。そんな上質な魚で燻製をつくったらそれは絶対に喜んでもらえるに決まっている…そう思い何度も交渉に伺いました。だから、代表が首を縦に振ってくれた時は本当に嬉しかったです。やっと得たチャンスを絶対に無駄にしたくないと強く思いました」。

▲忍沢養殖場のヤマメを使った自慢の商品 (写真提供:燻製屋響)

その後、手塚さんは次々と新しい商品の開発に力を注いだ。国内大会で入賞経験のある同市老舗豆腐店・横山豆腐店の豆腐や女性養蜂家として広く知られている730ハニーのハチミツ、ニジマス×キングサーモンの山梨新ブランド魚である富士の介を使ったものなど、燻製にするには難しいと言われている素材にも積極的に向き合い、その全てにこの地の上質な食材を盛り込んだ。

▲南アルプス市にある横山豆腐店の豆腐を使用した燻製。豆腐の味が生きた贅沢な味わいが特徴 (写真提供:燻製屋響)

▲730ハニーのハチミツを使ったナッツの燻製は女性やお子さんに大人気 (写真提供:燻製屋響)

▲富士の介を使った贅沢な味わいの燻製は酒の肴にもぴったり

「地域にあるこだわりの商品とコラボすることで、皆でこの地域を盛り上げられると思っています。弊社の商品を購入してくださった人には、コラボするつくり手のパンフレットも同封させてもらっています。箱を開けた人が、私たちの商品だけではなく、もう一つの楽しみを見つけられるように」

燻製屋響の燻製は、醤油やみりんなど和風出汁に漬け込んでつくるのが最大の特徴。チップにも残留農薬検査済みのサクランボや桃、ぶどうなど、南アルプスらしさのあるものを積極的に使用している。現在商品は13種類程あり、新しい地域の贈り物として早くも話題である。

▲もちろんスモークチップにもこだわっている

「今後はSDG’Sの観点から考えた地域や資源の循環も大切にしていきたいと考えています。フードロスや間伐材の活用など、より豊かな地域を目指した活動も並行していきたいと思います」と加えた。

▲燻製屋響の外観。少し分かりにくいが、HPの他、こちらのショップで直接購入することもできる

燻製屋響(株式会社マステック)

住所:山梨県南アルプス市下今諏訪381-5
電話番号:055-280-9500
https://kunseiya-hibiki.storeinfo.jp/


猫の寿命を最低20年にしたい〜猫株式会社〜

ある日、飼い猫が病気になった

(写真提供:猫株式会社)

そして最後に紹介するのは、燻製屋響と同じ南アルプス市にある猫株式会社。その名の通り、主には猫の爪とぎベッドや猫つぐら、天然鹿肉フードの開発・販売を手掛ける驚くほど猫愛に溢れた会社である。2015年の創業から徐々にその名を広め、全国メディアでも度々目にする知名度の高い会社へと駆け上がっている。今回取材に応じてくれた代表の小林一樹さんは、小さな頃から無類の猫好きかと思いきや、猫に出会ったのは意外にも19歳の時だった話す。

「友人が拾ってきた猫を預かったのが猫との出会いでした。同時に2匹を家族として迎え入れ、その半年後にもう1匹がやってきました。特に何かにこだわって育てていた訳ではありませんでしたが、飼い始めて2、3年経ったある日、1匹の猫が尿路結石症になったのです。病院では療法食を食べ続けるよう進められましたが、その時、“本当それしか選択肢がないのだろうか?”、“そもそもどんな病気でどんな原料を食べるのが良いのか?”ネットで調べたのです。しかし、思っていた以上の詳しい情報を見つけることができず、何を信用したら良いのか?この子を元気にするにはどうしたら良いのか?独学で得た知識を元にまずは自分で猫のご飯をつくってみることにしたのです」。

▲猫株式会社代表取締役小林一樹さん

お肉や野菜をフードプロセッサーでミンチにしてつくった初めての猫ご飯。最初の頃は、出汁を入れるなどして味付けもしたそう。しかし、徐々にその知識が豊富になると、必然的に猫の体型に最適な素材を用いてつくるようになっていったと小林さんは話す。
「猫は、人間より体型が小さいのだから品質基準も高くなるのは当たり前のこと。向き合い初めてからすぐ、猫の食べ方や便の質や回数にも変化が現れはじめました。しかし当時はそれが起業に繋がるなんて考えもせず、私の生活は変わらぬまま13年程が経過していきました」。

▲小林さんの飼猫 (写真提供:猫株式会社)

起業する時がきた

サラリーマンとして働きながら、猫との暮らしを続けていた小林さんだが、訳あって突如会社を退職した。その時、学生時代からの願望でもあった“起業”が現実として姿を表したのである。

「当時は、いわゆる猫ブームがやってくる前だったのですが、やるなら猫に関連することをやりたいと思っていました。サラリーマン時代から、人との繋がりを大切にしてきた私は、まず、全国にいる知人たちに会いに行ったのです。そこで、得た新しいご縁やアドバイスを持ち帰り、新事業の糧にしていきました」。

▲人と人との繋がりは、小林さんが事業を行なっている現在でも最も大切にしていることである

全国にいる知人たちの紹介や偶然の出会いの中で、無農薬の藁を使って制作している藁細工職人が手がける猫つぐらやフードの原材料となる山梨の上質な天然鹿肉、埼玉県の牛肉粉、鹿児島県のかつお節など、他にはない小林さんだけのオリジナル商品を数々つくりあげることに成功したのである。

▲現在、猫株式会社の主力商品でもある猫フード「Nyummy」の開発時の写真 (写真提供:猫株式会社)

▲改良を重ねてやっと完成させた猫フード「Nyummy」

▲無農薬の藁で、職人が一点ずつ丁寧につくり上げる猫つぐら (写真提供:猫株式会社)

▲約1年は保つという、とってもおしゃれな爪とぎベッド (写真提供:猫株式会社)

小林さんは創業当時、まだ未完成な商品展開の中でいくつかのビジネスプランコンテストで準優勝などの受賞経験も持つ。
それは、小林さんが取材中に幾度となく口にした「人間関係を担保にした品質保証」にこだわり続ける熱き想いが起こしたムーブメントなのであろう。

▲現在はフードの種類も充実している

現在は、猫に関連した商品のみならず、ドッグフードなども販売され、自社HPで購入可能である。しかしながらその人気は凄まじく、残念ながら生産が追いついていない状況である。
「現状、商品をなかなか入手できずご迷惑をおかけしてしまい申し訳ない気持ちでいっぱいです」と小林さんは繰り返す。

取材の最後に、今後の展望を伺うと、
「1匹の猫の衣食住に寄り添える会社になっていきたいと思っています。フードや玩具だけではなく、より安心して使用できるキャットタワーや健康を考えたサプリメントなども開発をしていきたいです。またそれと同時に、在宅ワークを充実させることにも力を入れる予定です。働きたくても今までの働き方では難しい人や短時間勤務を希望している人など、現代の多様な暮らしに合わせた働き方を定着させていきたいと思っています」。

そして、私たちが何より驚いたのは、小林さんが19才の時に出会ったあの愛猫3匹が、20年以上経った現在でも元気に生活しているという事実である。

▲20年以上経った今も元気な愛猫たちに驚く

猫株式会社

住所:山梨県南アルプス市浅原770-1
電話番号:055-225-5659
https://cat-log.com/


かなり濃厚な顔ぶれが並んだ今回の特集。どの企業も、山梨という枠を超えて注目されているオンリーワン企業ばかり。でもその成功の裏には、当然のことながら並ならぬ努力が存在していることが分かった。
この記事を読んでくれたあなたが、少しでも胸震えてくれることを願いつつ、今月は幕を閉じよう。
山梨に住んでいる人もそうでない人も、この3つの企業の様子が詳しく分かる各HPを覗いてみてくださいね。

取材・文・撮影/ anlib株式会社