こねる、伸ばす、発酵させる、いろいろな具材を混ぜ込む。
小麦粉はまるで白いキャンバスのよう。
キャンバスに描きたいのは、お客様が美味しいと喜ぶ顔なのかもしれません。
ところで日本のパンは世界で高い評価を受けているのをご存じですか?
柔らかさと甘さを武器に世界中の食卓を席巻しているとテレビで特集されました。
特にアジア圏では日本のパンがここ数年のブームになっているそうです。
山梨県は気候と水の条件が良く、美味しいパン屋さんが沢山あります。
今月はその中で「行列ができる地元のパン屋さん」3店をご紹介します。
無添加・化学調味料不使用・健康維持を目的としたベーグル専門店「ENcafe」
山梨では数少ないベーグル専門店の「ENcafe」
午後の早い時間には完売してしまう人気店の店主、石原さんにお話を伺いました。
「実はアメリカのベーグルはパサパサして固くて、日本人好みじゃないんです。
だから本場のベーグルが嫌いな方は結構いるんですよ。だから日本人好みに合うようにちょっと柔らかく作りました。モチモチとしたベーグルは好評で、うちのベーグルを食べた方が『えっ⁉ベーグルって固いかと思っていた!』と驚いて気に入ってくれたり、お知り合いの方におみやげにされたりしてくれたおかげで、徐々に広まっていきました。」
30年間地元の八代にご夫婦で学習塾を開いていましたが、子育ても終わり一区切りしたタイミングで学習塾を閉めた。何か新しい事をと考えた時、娘さんが東京でカフェに勤めていて、いずれ帰って来た時の為にと八代でカフェを開いたのが3年前。
奥まった所で、マルシェなど色々なイベントに出て宣伝をする日々で、知り合いから天然酵母を使った美味しいパンがあると聞いた。
実際に食べてみると、自家製酵母でブドウから作ったパンの美味しさに感動。
それから自身のカフェにも美味しいパンを置きたいと思い、パン作りを始めた。
しかし、試行錯誤しても天然酵母でのパン作りは想像よりも遥かに難しく、一度はパン作りを諦めようかと思ったそう。
そんな時マルシェに行った際、主催者さんが「有名なパン屋さんがあると人は集まる」と教えてくれ、一念発起して再びパン作りをやろうと決意した。
ご縁が結ぶ、成功の決め手となった「水」との出会い。
「不思議なもので、とある「水」との出会いがあり理想的なパンが作れました。」と石原さん。
マルシェで知り合った発酵や微生物の事に詳しい方から、良い「水」があると勧めてくれた、それが「プロトン水」だった。
【※プロトン(水素原子)は原子番号1番、宇宙で最初に出来たもの。あらゆる生命の源「水」の素。・解毒作用・強い浸透性・引き出す力があるとされる。】
決して安くはない「プロトン水浄水器」だったが、身体に良いものに凄く敏感な奥様が「この水が欲しい」と導入。
一般的に天然酵母は発酵が弱く発酵させるまでにとても手間がかかり管理が難しい。
ところが、このプロトン水でブドウを種に酵母を作ったら、すごく良く発酵しとても美味しい生地が出来た。
「これは本当に微生物に良いんだ!」と実感したそうです。
この美味しい生地を活かす為、その他の食材にもこだわった。
・塩は純国産の海水をそのまま結晶化した「海の精」。
・体内にある善玉菌を活性化させるオリゴ糖を多く含む「てんさい糖」。
・自家製燻製の肉は、韮崎にある「ぶうふぅうぅ農園」(日本初の放牧養豚場・抗生物質不使用)のバラ肉やベーコンを使用。
・クリームチーズ、バターは北海道産100%よつ葉乳業使用。
・小麦粉は北海道産100%ジャパニス使用。
お客様に常に誠実でありたい、ひとつひとつ丁寧に作るため量産はしないと決めた。
そして2年前には、マルシェのご縁で下石田に「ENcafe甲府店」をオープン。本物の美味しさが口コミで伝わり、メディアにも取り上げられ、たちまち完売する人気店となった。
「私たちは『ご縁を大切にしたい』という思いで店名を『ENcafe』にしました。
ご縁から培ったノウハウを惜しみなく発信していきたい」と石原さん。
4月には娘さんが戻って来て、新作の桜のベーグルを試作するそうです。
素敵なご家族が生み出すベーグル、ますます楽しみです。
ENcafe
住所:甲府店 甲府市下石田2-29-14 1F 営業日:木曜・金曜
住所:八代店 笛吹市八代町岡354-1 営業日:水曜・土曜・日曜
定休日:月曜・火曜
※4/21(木)4/22(金)は岡島百貨店7階パンフェス出店の為臨時休業
営業時間:11:00~売り切れ次第閉店
電話番号:090-3221-4363
Instagram:https://www.instagram.com/encafe0316/
前日にSNSで予約を受け付けています。
(カードの無い方は対象になりません)
期間2022年4/15~2022年5/15迄。
―近隣物件情報―
美味しくて、リーズナブル!行列の長さと接客の良さは山梨一「ル・ヴァン」
ル・ヴァンは障がいをお持ちの方中心に働く考え方の「社会福祉法人 忠恕会」が運営するパン屋さん。
少しでも障がいを持たれている方に働く場所を提供したいと思い、16年前に新規事業でベーカリー部門を立ち上げることとなった。
今回はそんなル・ヴァンの副施設長、長澤さんにお話しを伺いました。
全くゼロからのスタート。
開店当初の2006年はまだイオンタウンも無く、周辺には人が集まるような商業施設もなかった。
お店に人を誘致するためにスタート当初から職人を2人招き、「職人が作るパン」を中心に考えた。
その中でも職人を中心としつつ、利用者さんの能力に併せて袋詰めや野菜を挟む等、仕事量や技術などの出来る特技をいかしていきいきと働ける場所づくりを目指している。
「福祉を全面に出すのではなく、商品を買いに来て頂いて、その中で障がいをお持ちの方が働いているんだなという事を感じて頂ければ」と長澤さん。
超大ヒットしたマフィンの危機。
豊富な種類のパンはどれも美味しく、信じられないくらいリーズナブルな価格。
籠が空になれば、すぐに焼き立てが並ぶ、明るく丁寧な接客で評判を呼び、たちまち行列店となった。中でももちもちのマフィンはひとつ100円。
1日2000~2500個売れる大ヒット商品でル・ヴァンの代名詞となった。
「マフィンのヒットはたまたまです。」
以前に原料の値上がりにより、マフィンも110円、120円、150円まで値上がりをした。
元々の安さからの変化に少しずつお客様が離れてしまい、売上がガクンと落ちてしまった時期も。
マフィンはパンよりも利用者さんがかかわる工程が多く、生地充填してグラム調整して中身も入れる最高の商品。そんな看板商品をかつてのように多くの方にまた食べて頂きたいと思い、みんなで話合いを重ねる中思いきってもともとの100円に戻した。
障がいをお持ちの方を中心に働く職場、それが会社の理念。
「もうけじゃない。」と割り切り、見事お店の看板商品を復活させました。
お客様もスタッフも利用者さんも輝ける場所に。
最後にこれからの目標を伺いました。
「とにかくここを存続させたい、次の世代に引き継いで行きたい、ただそれだけです。
忙しくて疲れるけど、かっこよく言えば『働く喜びと純粋な人としての喜び』が実践されているのが多少できているかなと思います、毎日刺激的で楽しいです。」と照れながら話してくれました。
取材後、平日の午前中にもかかわらず駐車場は9割埋まり、入口にはすでに長蛇の列が。
店内には、あのパンもこのパンもとトレーにのせるお客様の姿、いきいきとしたスタッフの笑顔と元気な声もパンと一緒に袋に詰めてお持ち帰りされているようでした。
長澤さん、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。
ル・ヴァン
住所:山梨県中央市成島3508-13
電話番号:055-242-8800
営業時間:10:00~17:00
定休日:日曜・月曜・水曜
Instagram:https://www.instagram.com/le.vent2006/
―近隣物件情報―
まるで奇跡⁉築100年古民家×石窯焼きの丸山パン。
「最初から石窯パンをやるつもりじゃなかったんです。
お店を始める為に道具や機材を探している時、勝沼のワイングラス館で石窯パンをやっていた方がちょうど辞めるという事で、道具を全部譲って頂いたのです」
そう話すのは、店主の丸山祐介さん。
ここは山梨市落合、国道沿いにある築100年の古民家のパン屋さん。
観光農園を併設した駐車場には常に車の出入りがある、知る人ぞ知る人気店です。
奥様は舞浜のシェラトンホテルをメインに先輩のパン屋で何件か修行したパン職人。
独立する為地元山梨でお店を探し始めた時、丸山さんの実家観光農園の隣の築100年になる古民家が取り壊す予定だと聞き、そこを壊さずにパン屋をやらせてもらう事になった。
古民家はリノベーションして、登録有形文化財となった。
大きな樫の木が入口で木陰を作り、その下でブランコがゆれている。
ベンチと、古民家の広い縁側、鶏が遊ぶ広い庭園、何とも気持ちの良い癒しの空間。
広めの土間には焼き立てのパンを並べるスペース。
石窯と電気のオーブンの2台体制で、窯の特性に合わせて様々なパンを焼いている。
自分達が安心できる食材を使い、パンを通じて美味しく楽しい体験をしてもらえるようにと2018年にオープン。
お客様がSNSで取り上げ、地元紙やメディアにも掲載、たちまち行列店になった。
実家は桃・さくらんぼ・ぶどうの観光農園で、旬の時期になると駐車場の売店にフルーツが並ぶ。穫れたての山梨のフルーツを使った新作のパンも人気で、古民家の空間に華やかさを添える。
昔ご夫婦だけでやっていた頃は2時には完売してしまい、やむなくお店を閉めていたそうだが、今年はスタッフを増やし、夕方6時でもパンが並ぶようにしているという。
アレルギーを持つお子様がいるお客様のリクエストで、米粉100%パン(乳製品不使用)も作った。お客様の声を聞き新しいパンづくりに挑戦していきたいとのこと。
「今後新型コロナウイルスが落ち着いてきたら、イートインを充実させてパンを広い縁側でゆっくり食べて頂けたらなと思います。」と丸山さん。
ぽかぽかした縁側でお話を伺う時間はとても心地良く、あっという間に時が経ってしまいました。
丸山さん、素敵なお時間をありがとうございました。
田屋ノ前 丸山パン
住所:山梨県山梨市落合288-2
電話番号:080-1186-7900
OPEN:10:00~18:00(売り切れ次第終了)
定休日:月曜・日曜
Instagram:https://www.instagram.com/marupan29/
(カードの無い方は対象になりません)
期間2022年4/15〜2022年5/15迄。
―近隣物件情報―
いかがでしたか?
最後に豆知識を。
一般的なパンは、発酵したパン生地をそのまま焼き上げたもの。
ベーグルは、発酵した生地をいったん茹でてから焼き上げたもの。
茹でる事でデンプンが変化して、ベーグル特有のふっくらでモチモチ食感になるそうです。
その他にベーグルと他のパンとの違いは、主な原材料が小麦と水だけで、パター・牛乳・卵を使用しない事や、生地がハード系のため噛む回数が増えて満腹感が得られやすいそうです。
石窯は、石を熱した十分な熱量をもった窯。
火ではなく、温めた石から出る熱の遠赤外線効果を利用し、中まで一気に焼き上げます。
だから、中はもっちり・しっとり・焼き皮は赤黒色にこんがり・素材の味をぎゅっと閉じ込めたパンに焼きあがるそうです。
小麦って無限のキャンバスですね。
あれほどパンを食べたのに、またお腹が空いてきました。(これだから困る~)
明日並んで買いに行きます♪
岩田